2016年02月27日

内閣府・原子力空母の災害対策範囲の見直し検討作業委員会への要請

要請写真

 2月4日に発表された原子力艦災害対策マニュアル見直し検討作業委員会の試算結果
http://www.bousai.go.jp/taisaku/genshirtokukan/ は2003年の時代遅れの防災範囲の計算と全く同じもの、ないしそれより数値が後退したものとなっていたため、住民投票を成功させる会では、2月26日、内閣府防災担当に、要請書を提出して要請をし、以下の問題点を指摘しました。
 私達としては、この要請書の内容も各委員に伝えるとともに、地元住民側から、委員会等において、委員に対して、説明をする機会を設けるよう求め、担当者も委員会で資料として配付することについては検討する旨回答しました。
 次回の見直し検討作業委員会は、3月上旬の予定ですが、私達としては、原子力空母につき、原発と異なり、上記のような従前と全く同じもの、ないしそれより数値が後退したものが是認してしまわないか、大変に危惧をしております。

1、試算1の問題点

  • 平成15年調査報告書(第3回配付参考資料2の技術資料1)は、平均出力25%で15年間運転、直前4日間は1日18時間は平均出力25% 6時間は100%の終了時点で事故発生という想定であったのに、試算1では、平均出力15%で25年間運転と一方的に低い出力に、しかも単純に平均出力で直前の稼働状態を無視してしまっていることは、全く逆方向の、大きな後退であり、防災対策の基本たる最悪の想定に反するものとして許されない。
    • 平成15年調査報告書の基礎となっている2000年のオーストラリア報告書(第3回配付参考資料2の添付資料3)でも、平均出力25%としている。さらに事故直前の4日間、100%出力というより厳しい運転条件としているのである。
    • 甲状腺被曝量をもとに防災基準を考えているのだから、短寿命の放射性ヨウ素の炉内蓄積量の算定の上では、平均出力より、事故直前の出力が重視されねばならず、無視することは非科学的で、許されない。
    • 直前の運転出力状態も、横須賀への入港直前には、厚木基地との間で全艦載機を離発着させることは、公知の事実であり、平成15年調査報告書も『空母が出力100%で運転するような状況としては、搭載機を離陸させるために、風上に向かって全速力で運転する場合等が考えられる。』と書かれている。
       また公開された原子力空母ジョージワシントンの航海日誌(第3回配付参考資料7の添付資料3)によれば、横須賀に寄港する2011年4月20日の前の18日、19日に、propulsion plant drillという稼働中の原子炉を緊急停止させ、10分後に再稼働させ、100 %稼働とするドリルを行っていたことが、昨年明らかになった。

  • 平成15年調査報告書でも、試算1でも、原子炉1基の事故しか評価されていない。
    しかし、原子力空母は600MW×2基の原子炉を積んでいる。
     福島原発事故の実態から、近接した場所にある、さらに同一の推進システムの一部をなしている2基の原子炉が、地震や津波、あるいはミサイルや魚雷などによる攻撃という事態を原因として、同時に事故を起こすことは科学的に充分想定されるのだから、最悪の想定として、600MW×2基の原子炉が事故を起こすとの想定とせねばならない

  • 平成15年調査報告書でも、試算1でも、事故の形態を「冷却材喪失に伴う燃料損傷」としているが、
    • 福島原発が東日本大震災による地震と津波で冷却不能となって、核燃料がメルトダウン、メルトスルー、水素爆発を起こしたように、原子力空母も地震と津波で冷却不能となって、核燃料がメルトダウン、メルトスルー、水素爆発を起こすことが充分に想定される。
       福島原発事故では、核燃料のメルトダウン、メルトスルーによって、圧力容器、格納容器を突き抜けて、地表のコンクリート構造体まで達し、地下まで達している可能性もあると言われている。(本要請書添付資料8)しかし原子力空母では、原子炉は艦底近くにあるが、最悪の事故の場合、メルトダウン、メルトスルーによって、原子炉下には鉄板のみで、原発のようなコンクリート構造体はないから、メルトスルーした高温の燃料は鉄のみの艦底を貫通しえ、浅い水面で爆発を起こして、飛散することが充分に想定される。
       米国学術研究会議の研究(本要請書添付資料9)は、ニミッツ型原子力空母は艦底が脆弱であると指摘している。(かつて米国で、海上フロート式の原発が計画されたが、各燃料の閉じ込め機能が弱いので、NRCは許可しなかったとのことである。)
    • また原子力空母の原子炉と事故を起こした福島原発のマーク1型原子炉は、格納容器の容積が小さいので、水素爆発によって破壊されやすいという共通点があるとアメリカの原子炉専門家ゴードン・トンプソン(本要請書添付資料7)は指摘している。 また原子力空母の船体は開放された部分が多いから、二次的格納容器としての船体の閉じ込め機能は、多くを期待できない。
    • さらに戦闘艦に搭載された軍事的原子炉なのだから、有事の際に、原子力空母にミサイルや魚雷が命中すれば、稼働中の原子炉につき、非常用も含めた冷却機能が一瞬で失われると同時に、船体も破壊され閉じ込め機能が失われるという想定は、その軍事的機能や今日的情勢からして、当然になされねばならない。(米国学術研究会議の研究 本要請書添付資料9参照)
    • 従って原子力空母における漏洩率の設定は、ほぼ100%となりうるという最悪の想定がなされねばならないし、少なくとも福島原発事故を踏まえて、厳しい方向に設定されねばならない。
       2003年の想定を全く変えずに一次格納容器からの漏洩率0・34%二次格納容器からの漏洩率10%として原子炉内の死の灰の0・034%しか外部放出されないとするのは、この見直し作業委員会の存在意義を全く喪失させるものである。

  • 平成15年調査報告書でも、試算1でも、風速 1m/S 大気安定度F(安定)という気象条件の設定で試算している。平成15年調査報告書には、寄港地の実気象データが入手できなかったので、とあるが、横浜地方気象台による横須賀市の気象データは提供可能であるので、それ以外の気象条件での検討も求める。(本要請書添付資料10)
     また福島原発事故の飯館村や中通り地方の放射能被害に見られるように、風下への死の灰の降下が集中する降雨時、降雪時という気象条件の試算もされたい。

  • 平成15年調査報告書では、実効線量について、避難ゾーンは50mSv 以上、屋内退避ゾーンは10mSv 以上を基準としていた。
      ところが試算1は、平成15年調査報告書と、放射線量の算出の仕方は同様としながら、実効線量について屋内退避ゾーンは従前の10mSv 以上ではなく、100mSv 以上 と10倍にしてしまっている。
      これは明らかに、安全性を放棄する後退に他ならない。
     なぜ、実効線量について屋内退避ゾーンは従前の10mSv 以上としないのか。
    (防災対策基準を5mSV/h とすることとの整合性が取れるのか?)

2、別紙試算2の問題点

  • 原子力空母の出力と運転条件については、1・と同様の問題点がある。
    平成15年調査報告書では、平均出力25%で15年間運転、直前4日間は1日18時間は平均出力25% 6時間は100%の終了時点で事故発生という想定であったのに試算1では、平均出力15%で25年間運転 と一方的に低い出力に、しかも単純に平均出力で直前の稼働状態を無視してしまっていることは、全く逆方向の、大きな後退であり、防災対策の基本たる最悪の想定に反するものとして許されない。
     この直前の運転条件で放射性ヨウ素の炉内蓄積量を考えれば、原発の出力比の約50%となろう。
    (特に、支配的核種を放射性ヨウ素とするのであれば、平均出力より、事故直前の出力が重視されねばならず、無視することは非科学的で、許されない。)

  • 放射性物質の炉内蓄積量比によって、対策範囲を比較するならば、放射性ヨウ素が支配的であるという限定をすべきでない。
      福島原発事故の実態に照らし、長寿命の核種の影響は深刻である。
     そして原子力空母の場合には、25年間連続運転をするのであるから、長寿命の核種の炉内蓄積量もまた、重視されねばならない。
      そして、長寿命の核種の炉内蓄積量は原発の出力比(この場合4年運転)×平均出力の5倍以上とされねばならない。

  • 事故を起こす原子炉の数については、1・と同様に、2基同時に事故を起こしうると想定されねばならない。

  • 上記の3要素を考慮すると、原子力空母の場合、
    • 仮にヨウ素等の短寿命の核種とそれ以外の長寿命の核種との炉内蓄積量を2・1としても、原発との炉内蓄積量比は、
                       ヨウ素等    長寿命核種
      1200MW/3000MW×(2/3×50%+1/3×25%×5)=0・3となる。
    • ヨウ素を重視して9・1としても、原発との炉内蓄積量比は、
                      ヨウ素等    長寿命核種
      1200MW/3000MW×(90%×50%+10%×25%×5)=0・23となる。

  • 漏洩率が過少であること、気象条件の設定、PAZやUPZの設定での実効線量や小児甲状腺等価線量の設定が高すぎる点については、1に指摘したのと同様である。

  • 即ち、上記の原子力空母の実態に則した条件を設定するだけで、炉内蓄積量比について、10倍の差が生じるのであり、少なくとも試算2の炉内蓄積量比の10倍の0・3として、PAZやUPZが算出されねばならない。

  • このような炉内蓄積量比によるUPZの算出方法で、原子力資料情報室の上沢千尋研究員は、10・5KMがUPZとされるべきであるという報告書を作成している。
    (本要請書添付資料6)

  • また、原子力規制委員会の原子力災害対策指針(第3回配付参考資料4)は40・41頁の『表4 実用発電用原子炉以外の原子力災害対策重点区域について』において、研究開発段階の原子炉及び試験研究用原子炉施設で熱出力が5万KW以上のものについてUPZを8ー10kmと定めている。
     原子力空母も如何なる意味でも熱出力5万KW以上の原子炉である。
     従ってこのような人口密集地への原子力空母を受け入れた国の、地元住民への責任として、より安全側への事故想定と防災範囲の設定がなされねばならない。
posted by BlogMaster at 22:43| Comment(0) | 住民投票の会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする